2006/10/23
【講演】
日本の過去・現在・未来・と教育基本法「改正」
BとC
2006年10月13日
三輪定宣氏(千葉大学名誉教授、帝京平成大学教授)


 特殊法人労連学習会で三輪教授が講演された内容の抜粋を掲載します。
見出しは編集部がつけました。

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  教育基本法「改正」と日米同盟

 近年の日米同盟の急速な変質が、教育基本法「改正」の背景として無視できない。
 過去10年に限ってみると、1996年4月の「日米安全保障共同宣言―21世紀に向けての同盟」(自衛隊の海外派兵)、1997年9月の「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」(安保の範囲を「周辺事態」に拡大)、1999年5月の「周辺事態措置法」、2003年6月の有事関連3法(武力攻撃事態法、改正自衛隊法、改正安全保障会議設置法)、同年7月のイラク復興支援特別措置法などであり、とくに有事関連法は日本の防衛政策の「歴史的転換点」(『防衛白書(2003年版)』)と評価されている。

 アメリカの対日総合戦略である2000年11月の「合衆国と日本―成熟したパートナーシップへ向けての前進」(委員長のアーミテ−ジ{海軍出身の軍人}の名にちなみ俗に"アーミテ−ジ・レポート"。共和・民主両党のオールキャストの合作)は、自衛隊の軍隊化、国連常任理事国入り、構造改革・規制緩和・市場開放などを迫っている。軍事同盟の「ハードウェア」の構築を裏打ちする「ソフトウェア」の整備、それを支える「人づくり」のための教育制度の全面的改変が不可欠の段階にいたっている。

 この状況は、1950年前後、アメリカの対日政策の大転換における教育の変化を想起させる。北朝鮮独立・中国革命・朝鮮戦争などの冷戦の激化を背景に、1953年10月、アメリカは日本に35万人の再軍備を要求し、日本側は「愛国心」教育によりそれに応えることを密約した「池田・ロバートソン会談」(吉田茂首相特使池田勇人と国務次官補ロバートソンの密談)であり、その場で日本側が再軍備を拒むことのできた最大の理由は、憲法9条と戦後教育改革による「平和教育」の浸透であった。

 それを境に教育の「逆」コースが顕著になる。すなわち、1954年の教師の政治活動・教育の制限、1955年の自民党結成と戦後教育改革の精算路線の立ち上げ、1956年の教育委員の公選制から任命制への改変、教科書検定強化、1958年の教師の勤務評定、学習指導要領の試案から告示への法令化、「道徳の時間」特設などであり、いずれも教育基本法の事実上の否定・形骸化政策であった。
(つづく)

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  ナショナリズムの台頭

  教育基本法「改正」を突き上げるもう一つの背景は、ナショナリズムの急速な台頭である。
 安倍政権の成立は、その象徴といえる。同氏著『美しい国へ』(文藝春秋社、2006年7月)「第7章 教育の再生」では、「戦後日本は、六〇年前の戦争の原因と敗戦の原因をひたすら国家主義に求め」、「国家=悪という方程式がビルトイン」されているので、「自虐的な偏向教育」是正のモデルとして、イギリスのサッチャー教育改革を学び、「教育基本法改正に活かせると考え」、2004年、幹事長時代に自民党調査団を派遣した、などと述べている。学校評価・査察制度、全国学力調査、教育バウチャーをはじめ、教育免許更新制、モラル教育など、教育の国家統制強化のメニューが盛られている。

 保守的潮流の代表として「日本会議」の動きが重大である。「日本会議」は、1997年、「日本を守る国民会議」と「日本を守る会」の統合で結成されて以来、教育基本法「改正」の提起者・推進力となり、最近では2006年5月17日、武道館で教育基本法「改正案」の国会成立を求める1万人緊急集会を開催した。

 そのスローガンは、憲法改正、教育基本法改正、靖国公式参拝定着、よりよい教科書の採択など。綱領は「歴史の伝統を継承し、健全なる国民精神の興隆を期す」などであり、その解説「日本会議のめざすもの」には、「皇室の敬愛」「皇室を中心に民族の一体感」「国を愛し、公共につくす精神」「国を守る気概」などとあり、それらが教育基本法「正案」に盛り込まれている。

 役員には(以下は5月の1万人集会時点の肩書き)会長に麻生太郎外相、副会長に谷垣財務相、副幹事長に安倍晋三官房長官が並び、代表委員に石原慎太郎東京都知事が名を連ね、傘下の「日本会議国会議員懇談会」に242人が加入している。
 また、日本会議と同国会議員懇談会の合同役員会が2004年2月25日、教育基本法改正促進委員会を設置した。

 2006年7月時点、自民党衆議院議員248名、同参議院議員130名、計378名、民主党衆参議員40名以上、計418名以上(衆参国会議員の57.6%以上)を数える。役員は最高顧問:森喜朗元首相、西岡武夫元文相、顧問:鳩山由紀夫民主党幹事長、与謝野馨元文相ら、委員長代理:下村博文文部科学大臣政務官、理事:山谷えり子教育再生担当補佐官ら、教育基本法改正論議の推進メンバーである。

 同じ立場の「民間教育臨調」=「日本の教育改革」有識者懇談会の活動も重大である。その役員は会長:西澤潤一(首都大学東京学長)、運営委員長:高橋史郎(明星大学教授)、副会長5名中4名が日本会議役員であり、同会議役員77名のうち30名がこれに参加し、役員の3分の1を占める宗教団体、及び旧軍関係者は表面に出ていない。
 同会は、2003年1月26日設立され、2005年11月29日の教育基本法改正を求める中央国民集会には、国会議員160名が出席した。
                             (つづく)

 

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